スナック ゼベット。 ススキノの 繁華街にある。

 鉄筋建てのビル。 ガラスの自動ドア。 奥の正面に 緑の行灯。 
 近づくと、店の入り口が、見えてくる。
 そこを あけると、聞こえてくる 声。

 「よお」              「げんきーー?」
       「・・・・・・。」 

 いつも 満席だ。

 「ちょっと、出かけてくるワ。」 誰かが 言う。
 気を 利かせた 椅子が空く。 「すいません。」と 礼をいう。
 せまい あいだを 縫うように 席に座る。

 マスター の アベちゃんから おしぼりを もらう。

 仕事。友人。恋愛。 ときには 政治や経済。
 それぞれが それぞれの話題。
 ときどき ひとつの話が みんなに広がって 大騒ぎになる。

 マスターの 声に 熱がこもる。
 カウンターの中で 彼か 彼女が グラスを洗う。

 さっき 席をあけてくれたひとが もどってきた。

 夜が更けて。 お客が少しずつ 帰っていく。


 静かになると。
 店のギターを 誰かが 弾く。